ひな菊と黒い犬

まあまあそこそこほどほど

そうだ、湯治に行こう。マジ湯治。

鳴子こけし
鳴子温泉郷に行くことにした。

夫の盆休みは、毎年土曜日から日曜日までの9連休あるのが恒例。
でも妻の休みはカレンダー通りで盆休みというのがほぼない。
今年から始まった仕事は、盆休みがスケジュールされていたのだけれども、ほんとうに休めるか予測が立たなくて、結局休める、ということが確定したのが1週間前。最長4泊5日の旅行が可能になった。
お盆期間のハイシーズンなので、今から飛行機や宿を予約するのは空きがないし高い。
妻は久しぶりにキャンプでも行こうかなと思っていたのだけれど、夫が妻の手荒れを憂い「湯治しよう」と言い出した。

去年の7月から妻の手を悪化させている汗疱さんは、冬になったら治ると言われていたけれどまったく完治せず。
結局6月が一番症状が落ち着いていて、このまま治るかと思われたのに7月に入って悪化の一途をたどる一方。
約1年いろんなことを試した結果、10のうち2~6くらいの波で症状を制御できるようになったものの、完治には至らず打開策も尽きた。

湯治で汗疱が治る、という気はしていないのだけれど、これまでに湯治というのはしたことがないし、人生で湯治をするなら今かも、という気になった。
ちなみに夫も10年来の皮膚病を抱えていて、あわよくばという気持ちがある。
湯治というと最低でも1週間から1か月という期間を設けるものなので、4泊5日というのは短い気もするけれど、サラリーマンに4連泊はなかなかできるものではない。
ガチ湯治とまではいかなくても、マジ湯治くらいやりたい気分。

さてどこの湯治場に行くか、というので夫が指定したのは下記。
・車で渋滞回避が可能な範囲(=北関東以北とし、南関東以南・長野・山梨・北陸を除外)
・泉質と費用は問わない(=なんだったら20万くらい払ってもいい)
・夜中も入浴できる(=できれば24時間いつでも)

有名な湯治場というと、ざっと調べて下記。
青森:酸ヶ湯:酸性硫黄泉
秋田:玉川:強酸性塩化物泉
岩手:大沢:アルカリ性単純泉
山形:肘折:中性塩化物泉
栃木:那須:硫黄泉・硫酸塩泉
群馬:草津: 酸性硫黄泉

効能を考えると硫黄泉か硫酸塩泉なのだけれど、これまでの経験上、硫黄泉は服にまで匂いがつくのが嫌なのと、硫酸塩泉は1回で湯あたりする確率が高くて敬遠。
pHが低すぎる(2.0以下)・高すぎる(10.0以上)のも、ひたすら肌を削っているだけという気がして、何回も入りたいという気になれない。
単純泉と塩化物泉はありふれてるので、せっかくだから珍しい泉質にしたいなというので除外。

無目的にあちこち宿を検索してみるけど、2食付2万円程度の宿ばかり。
2食付のところを連泊すると食べきれない量で、同じ食事が毎日でてくるから、食事無くて素泊まりでもいいや、というと途端にヒットしない。
安く長く泊まることが目的の「湯治場」という文化は廃れつつあるようだ、と感じる。
「バス・トイレなし」の部屋がある旅館自体が少なくなってきているから、「バス・トイレ共同=湯治宿」というだけな気がしてくる。

なにかこれという軸を決めないと探しにくいな。
そういえばこの間行った宮島の宿は「ただの地下水」というお風呂だったのにすごく柔らかくて、肌の調子が良くて、調べると「シリカ」の含有量が高いと思われた。
nagareru.hatenadiary.org

シリカの含有量が高い温泉、それはすなわちメタケイ酸の含有量が高い温泉。
メタケイ酸。温泉話の界隈では最近よく聞く。
happy-onsen.com

別府・鉄輪・湯布院がトップクラス。
地元・愛媛からすると、大分はお向かいさんなので何度か行ったことがあり、だいたいどんな泉質か予想がついた。
今回は飛行機乗らないので除外。北海道も外す。

とすると、次点の「鳴子温泉:旅館すがわら」「中山平温泉:しんとろの湯(共同浴場)」
鳴子温泉中山平温泉はお隣さんで、鳴子温泉郷と一括りに紹介されることが多い。
1kgあたり100mgもあれば美肌の湯とされるらしい。
鳴子温泉郷は大体どこでも200mg/kg前後の含有量があるようで、湯治の温泉地を「鳴子温泉郷」にすることにした。

楽天トラベルで2人で4泊できる宿を探すと、高い宿(20万/1人1泊2.5万)と安い宿(4万/1人1泊5000円相当)に見事に分かれる。
夫は20万くらい払ってもいいというが、高い宿は当然素泊まりプランが無く、価格差5倍で、4泊同じ飯・豪華飯を払う価値が見いだせなかった。
随分価格差があるな、と内容を見ると、安い宿はまさに「湯治宿」だった。
トイレ・バスなし、キッチン付き(もしくは共同キッチン利用可)。
ドミトリーと違って個室前提だけど、鍵がかからない部屋もある。
扇風機のみ・クーラーなしの宿が多い。

調べていくと鳴子温泉郷は、上記のような宿(=湯治文化)がしっかり残っていて、オンライン予約できない宿まで含めるとかなりの数の湯治宿があることがわかった。
ただどこも10室無いような宿が多く、オンライン予約ができるところは既に予約で埋まっている。
10万/1人1泊1万くらいで、夕食ナシ朝食付、冷房完備でそこそこきれいな宿、というのが空いてない。
既に宿泊予定日まで1週間を切っていて、いちいち電話で空きを確認していくのもめんどくさい。

なにか、これという優先順位を決めないと、満足度が低くなりそう。
幸いオンライン予約できるところはレビューが多く、とても参考になった。
そんなわけで今回の湯治の宿選びで、最も重要視したのは「家族風呂」「部屋付キッチン(部屋で火器使用可)」「泉質2種類以上」。

それで出てきたのが、東鳴子温泉・高友旅館。
レビュー曰く「旅館は汚いけど黒湯は最高」。
高友旅館|宮城県大崎市鳴子 東鳴子温泉 湯治宿
travel.rakuten.co.jp
www.jalan.net

その「汚さ」に至っては、「語らずにはいられない」「書かずにはいられない」というレビュー数。
「古い」ではなく「汚い」。
「人手が少なく掃除が追い付いていない」だったのが「掃除していない」というレビューに変化し、さらに「掃除する気がない」に進化している。
当然ながら怒り出す人、連泊をやめる人、果ては夫婦喧嘩の顛末まで。
しかしまるで言い訳するかのように「湯はいい」でレビューが締められる。
読んでいると「掃除さえしてくれればいいのに」という愛憎さえ感じられる。
はた目でレビューを読んでいる分には興味深い。
宿泊ブログやXポストまで読んでいると、このドキュメント分析で論文一本書けそうなくらいだ。

極端な話、鳴子温泉近くのキャンプ場に予約する方がきれいなトイレと我々好みの空間が構築できると思われた。
が、キャンプ場宿泊では、夫が必須とする「夜中も入浴」がクリアできない。
もちろん優先順位とした「家族風呂」「部屋付キッチン」「泉質2種類以上」を手放せば、少なくとも「汚い」ということはない。

今回は安さ第一ではないので、高友旅館の他にいくつか候補はあった。
でも「価格は同程度・泉質も2種類以上だが、読むのも嫌な不愉快なレビューが多い」「素泊まりで価格は1.5倍になるのにキッチンも冷房もない泉質は1種類のみ」「2食付で価格は2倍になるのに家族風呂がない泉質は1種類のみ」。
色々条件を照らし合わせて比較していくと、「汚い」のは「自分が使うところだけでも掃除すればいいのでは?」という気になってきた。
「家族風呂」「キッチン」「泉質」は、宿に無いと自分でどうにもならないけど、「掃除」は自分で対応できる。

例えば小屋同然のバンガローと思えば、蜘蛛の巣や埃は払えばいい。
nagareru.hatenadiary.org

例えば四国遍路をしたときには使ったトイレは掃除して回った。
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例えばレトロ廃墟は去年も経験した。
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例えばかけ流しの温泉では体や頭を洗わない。
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キャンプ同然と思えば虫対策はある程度可能。
掃除して環境を快適にして4泊する方が気分が良さそう。
新しいレビューではウォシュレットトイレになっているというのも、なんとかなるのではという気になった。
まあだめだったら1泊だけしてあとキャンセルして他の宿でいいよ、と割り切ることにした。
つづく。