ひな菊と黒い犬

まあまあそこそこほどほど

東鳴子温泉・高友旅館で湯めぐり三昧

菅原分店765で見つけた「くろゆひよこ」
高友旅館は、温泉ワンダーランドでした。

鳴子温泉郷は、鳴子・東鳴子・川渡・中山平・鬼首の5ヶ所の温泉地からなる一大温泉郷です。
源泉数が370本以上、個人で源泉を持っている家もあるそう。
調べると泉質がすごく豊富で、日本にある10の泉質のうち7種類(単純温泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉・含鉄泉・酸性泉・硫黄泉)が湧出する。
(含よう素泉・放射能泉・二酸化炭素泉はありません)

しかもいろんな泉質が混ざっている。
これは、泉質としては一定ではなく、日によって違うと思われた。
そういう意味でも「湯治」にして正解だったと思う。

潟沼
温泉地たらしめているのは、活火山「鳴子火山群」。
気象庁|鳴子
酸性の火口湖・潟沼(かたぬま)は、「青い」というので見に行きましたが、緑でした。全国にいわゆる「青い」と言われる湖はたくさんあるけれど、大体GWあたりの写真なので、潟沼もそうなのかも。
写真で見た色は浅葱色とでもいうのか、のっぺりとした緑青白色は、まさに硫黄と硫酸塩とケイ素の芸術。
www.city.osaki.miyagi.jp

火山性の温泉は、熱水が岩石を通過することにより化学反応を起こして様々な泉質になる。
誰か化学反応の説明をしてほしい。
これだけの泉質、ジオパーク的にも興味深いが、解説資料が少ない。
ヘタな解説より面白かったのは下記。
www.shizecon.net

ちなみに私は泉質マニアでも温泉ファンでもないです。
強いて言うならジオ好き。
高友旅館は、旅館だけで4種の源泉を持つ。
そんな旅館は、渋温泉・金具屋以来です。
nagareru.hatenadiary.org

温泉はナマモノ。
皆が口をそろえてレビューする「しかし湯はいい」。
どんなものかと思いましたが「頷首」「首肯」という言葉を使いたい。

・幸の湯(黒湯)
・顯の湯(プール風呂・婦人風呂・紅葉風呂)
・玉の湯(ラムネ風呂・ひょうたん風呂)
・鷲の湯(家族風呂)

黒湯
温泉マニア方が新菊島温泉と並び称していたので調べたけれども新菊島は2021年に閉館していた。
新菊島温泉 - 秘境温泉 神秘の湯

黒湯も今のうちだと思う。
基本混浴で、宿泊者向けに19時~21時が女性専用、というのも宿泊にした決め手の一つ。
黒湯は、昭和27年に人工掘削で地下400mから湧出させたものらしい。
「黒湯」というだけあって、いわゆる「モール泉」の仲間と思われる。
レビューでは、右も左も「アブラ臭」。
「タカトモフレグランス」とも謳われる独特の香りは、想像していたよりも穏やかでした。
もっとランプの宿みたいな灯油臭を想像していたのだけれど、タール臭と硫黄臭が混ざった感じ。
竹酢液に硫黄の温泉の元を混ぜると再現できそう。
一時期竹酢液の入浴剤を愛用していたから我々が慣れているだけかも。

湯の花は白と黒とあり、ゴミかと見まごうほどたくさんあります。
入ると足が見えにくくなる程度に緑濁。
モール泉は泥炭層(亜炭層)から生まれる。
植物性の有機物(腐植物)が多く含まれる。
何億年前か知らないけど、かつての森だったところ、炭になりきれない植物たちの間をマグマの熱水が通る様を想像をする。
成分表では「含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉」になっているので、硫黄+硫化水素(泥炭)+炭酸水素(石灰)と多彩な地質が想像できる。
メタケイ酸は、236.4mg/kg(令和元年分析)。

温度は高め(体感では42度)。
2泊目に、誰かが加水したらしく、表面はぬるく、底に水が溜まっていて冷たい。
濁りが薄くなっててびっくりした。
開いてた蛇口を速攻で締め、浴槽をかき混ぜて温度を均一にする。
そこらへんに転がってたプラ管を見つけ、だくだくと捨てられている方の湯口から強制的に注ぎ込み、ようやく一息つく。
夫もぬるいという境遇に出くわし、黒湯以外も含めると合計5回、開けっ放しの水道の蛇口を締めている。源泉かけ流しなのにもったいない。
水を足すのは構わないけど、開けっ放しはやめてくれ。
最後に栓を締める

ちなみにシャワー使えるところは一つもない。カランは錆びて締まり切らず冷たい湯が出る。
カラン シャワー
ここで洗髪・体を洗うという思考は放棄しています。
女子三人組がこの浴槽を横目に冷たいカランで洗髪していてツワモノ、と思った。
黒湯の板壁が朽ちていて剥がれそうだな、と思っていたら、3日目に剥がれた板が落ちていたのを見つけた。

プール風呂
黒湯の隣にあるプール風呂。成分表では黒湯と同じ「含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉」だけれど、カルシウムイオン(91.9mg/kg)は、黒湯の3倍ある。周りの鍾乳洞さながらな白い層の重なりがすごい。手すりに溜まった「タカトモアワビ」を私も撮影せずにはいられない。
タカトモアワビ
体感では38度のぬるゆ。加水なし。
メタケイ酸は、206.6mg/kg(令和元年分析)。

黒湯とプール風呂で温冷をひたすら繰り返し、エンドレスで入浴できる天国。

婦人の湯 紅葉風呂
プール風呂と同じ源泉の婦人の湯(横写真)と家族風呂の紅葉風呂(縦写真)。
温度は適温(体感では41度)にしてあって入りやすい。
婦人風呂と黒湯を仕切っている摺りガラスのデザインが、実家の風呂と同じだった。
こちらは昼間に一度入ったきり。
紅葉風呂は白濁している写真もあったけれど、我々が使ったときはいつも透明でした。
貸切はドア外にスリッパを置いて「入浴中」とするのがルール。
最後の上がり湯は紅葉風呂にしています。

ラムネ風呂
女性専用・ラムネ風呂。黒湯が女性専用になる19時~21時は、ラムネ風呂が男性専用になります。
成分表では「ナトリウム-炭酸水素塩泉」というだけあって硫黄臭はしない。
無色透明の入りやすい重曹泉です。
表面に泡が浮いている写真も見たけれど、ぱっと見わからない。
というか熱い。レビューで熱くて入れなかったというのを読んでいたけれど、初回は熱くて手桶に汲んだお湯を体にかけての蒸し風呂状態。
仕方なく加水しますが、湯壺(ボウル状の箇所で源泉と水が混ざって湯舟に流れる)仕様になっているので、まったく冷める気配なし。体感で45度くらい。洗面器をふたつ組み合わせて水が直接浴槽に流れるようにし、洗面器で湯もみをして温度を下げます。
そうこうしている間に、前日プール風呂で一緒になった奥さんが入ってきて「どうです?」という。
「だめです熱すぎて入れない」というと、彼女はかけ湯を試して「諦めます」と早々に退場。
私はもう少し粘って、体感で43度くらいまで下げ、浴槽に入れる温度にしたけど、1分も全身入っていられず、惨敗。
足湯をすると足に泡がたくさんついて、ぬるっとする。バスボム!
これは全身浸かりたい、と翌日リベンジ。
朝6時から1cmほどの出しっぱなし加水をはじめます。
2~4時間おきに入浴しに行って、蛇口と温度を確認。
実に16時頃、ようやく全身入ってのラムネの長湯を堪能できました。
19時に入浴した夫が蛇口を締める。一日ラムネ湯でした。
メタケイ酸は、185.8mg/kg(令和元年分析)。

ひょうたん湯
源泉が同じひょうたん湯は男性専用だけど適温だそうで、入りやすいとのこと。
泡も多少はつくけど、ラムネ風呂ほどではないそうだ。妻は未入浴。

館内図
もう一個ある、というので館内図を見ると、バツ印。
ホームページには「はたご宿泊者のみ御利用可能」ということだけれど、もちろん探検します。

家族風呂
こちらはドアがしまっていれば「入浴中」とのことらしい。
入口上の青海波のような意匠がかわいい。

家族風呂
古い写真では仕切りがあるのだけれども、なかった。
成分表では、ラムネ風呂と同じ「ナトリウム-炭酸水素塩温泉」だけど、源泉は違ってて、少しだけ鉄臭い。鉄イオンは(II)0.5mg(III)0.1mgで、合わせても0.6mg/kg。
ラムネ風呂は合わせても0.3mg/kgで、鉄臭いとは感じなかった。
いわゆる含鉄泉の場合、基準値は20mg/kg以上。
周辺が茶色に変色する伊香保の石段の湯でも7.34mg/kgらしいから、比較するとほとんど入ってないという数値に見えるけれど、鉄含有の独特の軋み感があった。
メタケイ酸は、263.5mg/kg(令和元年分析)で、高友旅館では一番含有量が多い。
こちらは夜中に一度入ったきり。

ちなみにホームページでは、黒湯のことを「鉄天然ラジウム泉」と記載してあるけれど、令和元年分析の黒湯の鉄イオンは合わせても0.2mg/kgだし、ラドンは数値の記載すらない(鳴子温泉郷では放射能泉はない)。
もしかしたらボーリングしたときの成分表はそうだったのかなあ、と夢を膨らませる。

pHは、すべて6.5前後で入りやすい。
何度でも入れる。
入浴のあとは、部屋に戻って体が冷めるまでごろ寝。冷めたらまた入る、の繰り返し。
朝5時くらいに入り、朝ごはんをつくって食べて、10時くらいにまた入り、昼ごはんをつくって食べて、昼寝して、16時くらいにまた入り、夕寝して、夕飯をつくって食べて19時くらいにまた入り、そのまま眠って夜中の2時くらいに目が覚めてまた入る、の繰り返し。
湯治中日の3日目は台風5号が最接近ということで、宿から一歩も出ず、ひたすら湯治してました。
湯治5日間は症状が軽く、一度も薬を飲まずに済んだ。
つづく。