ひな菊と黒い犬

まあまあそこそこほどほど

足尾銅山の松木村跡を歩いて英気を養う

大畑沢無料駐車場の展望台から足尾砂防えん堤を望む
大畑沢無料駐車場に展望台があるというので、登ってみたのだけれど、見事に青々としていて、展望できないほどになっていた。

nagareru.hatenadiary.org
緑の足尾を見に行きたい、と思い立った。
前回の足尾訪問から9年。
前回は11月だったので、青々としている風景ではなかったから、また再訪したいと思っていた。
前回と同じ場所から撮影すべく、大畑沢無料駐車場に立つ。

前回行った足尾環境学習センターにも再訪。見られるビデオは全部観たいとみていると、故・立松和平ナレーションで、立松和平が植樹していた時の映像が出てきて、これさっき見た大畑沢無料駐車場だ、とわかった。当時の写真がネットに残ってないかなと探していたらでてきたのでリンクしておく。
www.mori-net.org

そうか、これも全部植樹した木なのか。
Google マップ

そんなわけでビフォー(2015年11月)アフター(2024年7月)です。
大畑沢無料駐車場前の道路から足尾砂防えん堤を望む
大畑沢無料駐車場前の道路から撮影(2015年11月)
大畑沢無料駐車場前の道路から撮影(2024年7月)
あかがね橋から下流の旧足尾銅山製錬所大煙突を望む
あかがね橋から撮影(2015年11月)
あかがね橋から撮影(2024年7月)
銅親水公園駐車場から松木川上流を望む
銅親水公園駐車場から撮影(2015年11月)
銅親水公園駐車場から撮影(2024年7月)

ちなみに看板にあった、かつての風景。
看板にあったかつての写真

銅親水公園駐車場は無料駐車場なのだけれど、登山客が多いようで朝9時時点で満車。
足尾環境学習センター利用者用に4台駐車場が確保されており、そこに駐車しました。
足尾環境学習センターは9時30分開館なのだけれど、開館待ちしてたら15分も前に入館させていただいた。
観られる映像は全部観て、係の人の説明を聞いて、資料をざっと読み漁り、隣の無料休憩所で立松和平の本を眺めていたら、11時半です。
河鹿
ちなみに映像の中で一番衝撃だった「河鹿」の意味。
カジカガエル(河鹿蛙)という非常に鳴き声の美しいカエルがいて、シカの声に似ているから「河鹿」というのだけれど、むしろ鳥に近い声で鳴く。
地元愛媛ではカジカというと鰍のことで、ドジョウみたいな川魚のことをいう。
足尾には「かじか荘」という日帰り入浴できる施設があるのだけれど、「河鹿」ってカエルでもサカナでもない、と思ったとたん、鉱山の男たちの保養施設を想像する。
kajika.info

係の方が地図を見せてくれて、斜面がゆるい東側(松木川の左岸)は木が大きくなってきたけど、西側(松木川の右岸)はまだまだだね、という。ヘリコプターで種を撒くけど全部流されてね。
廃村となった松木村まで1時間ほど、行ってみるといい、というので歩いてみることにした。

久蔵川を渡る
川の水はきらきらしていて冷たい。
工事用の道路は平坦で歩きやすく、思いのほか工事車両が通るし、誰もいないかと思いきや、意外に人とすれ違う。登山が終わったと思われる人、釣りの帰り道、トレッキングで走ってる人、散策している人。

採石場
工事音がするな、と思ったら採石場だった。

ガレ場
そして採石場のすぐそばにガレ場。
銅山のスラグ(鉱滓)の堆積場は、まるで月面基地のようだ。
銅親水公園からはまったく見えなかったな。
syozo-uni.net

そのすぐ先に墓石がある。
かつて松木村があった、入口のあたりかと想像する。
墓石

砂防ダムはこれでもかとあって、そのほとんどが埋まっている。
これでもかとある砂防ダム

そろそろ電波が切れる、と連れが言うので、折り返し地点どこにしようか、とGoogleマップをみると「遊動楽舎みちくさ」というマークがある。行ってみたら「トイレあり」の案内。ボランティアで植林作業をしている方たちの拠点のようだ。
みちくさ

無縁仏の石塔があると聞いて見に来た、というとそれはお寺にある、という。
www.shimotsuke.co.jp
あーあの石塔は廃村の中にあるわけではないのか、と思ったら、10分ほど歩くと墓があるという。
案内してくれるというのでお願いすることにした。
案内してもらえなかったら気づけなかったと思う。

松木村の墓石
たぶん村を一望できたんだろう、という場所。いい場所だな、と思った。
廃村になった影響のひとつに山火事があったから、線香は立てないのだそうだ。
すぐそばに雨量計があった。

松木川一号砂防堰堤改築工事
新しい砂防ダムができている!と思ったら、改築したそうだ。松木川一号砂防堰堤改築工事。

松木川一号砂防堰堤改築工事
さらに上流にある砂防ダムを改修するための工事用道路をつくっていた。
どこで折り返そうかと思っていたけれど、ここらへんが折り返し地点かも。
少しだけ川遊びをして、みちくさでボランティアの方にコーヒーをごちそうになり、持参の非常食をもぐもぐ。
トイレを借りて帰ることにした。
みちくさでは興味深い話をいろいろ聞いた。
ハンミョウという虫の話。
採石場がたくさん稼働していると景気がいいことがわかる。
ここより上流の川釣りでは、こんな大きいイワナがとれる。
必ずリリースしなければならないから大きい。
足尾の毒があるからね。
www.tsuritickets.com

そうか、と思いつつ、そういうのちゃんと数値で経過報告してくれるといいんだけどな、とこの間訪れた神岡鉱山のことを思う。
newsdig.tbs.co.jp

「足尾の山に100万本の木を植えよう」と植樹が行われている。
私の地元・愛媛でも別子銅山という凄まじい公害があって、でもそれほどに公害として爪痕を残していないのは、やはり住友の思想と財力によるものなのだろうな。
「明治27(1894)年、伊庭の別子支配人就任まで毎年平均6万本に満たなかった植林本数は、毎年100万本を超えるようになった。」
毎年100万本って・・・!
www.sumitomo.gr.jp

土砂崩れ
こうして歩いていても、あちこちに土砂崩れの跡を見つけることができる。
足尾銅山でどうにかなる前から、土砂崩れはあったんだろうな、と思う自然だ。
そういえば学習センターで華厳の滝の商店街が男体山の土砂崩れに遭う映像があって、人間が住んではいけないところが観光地になってるんだと思った。

トンボ
歩いているとトンボやチョウがたくさん飛んでいる。
人が植林した木がシカに食われて、サクラを植えるとサクランボをクマが食べていくらしい。
クマの糞にはサクランボの実がたくさんあるのだそうだ。
そういや、そうやってクマが森をつくっていくって、こないだ行ったカミネ動物園で説明してあった。
公園で野生サル見たわ。カモシカ環境保全のシンボルになってた。

帰り道
帰り道の風景。
左手にガレ場、右手に採石場、そして残った墓石。
うん、こうやって私たちは自然を利用しながら自然を破壊しながら自然を治しながら生きていく。

久蔵川

ほら、こころなしか青すぎるようにも見える川。
私が大好きな奥四万湖の青を彷彿とさせる。
足尾では現在も中才浄水場で浄化が行われていて、排水を簀子橋堆積場に持っていくのだそうだ。
あの鉱滓ダム現役なのか・・。
www.city.nikko.lg.jp

そういう中で生きていかねばならない、という点で、それはもう品木ダムの中和作業と変わらない気がする。
www.ktr.mlit.go.jp

うん、明日も頑張ろう。
いろんな血と汗の上に、私たちは成り立ってる。