ひな菊と黒い犬

まあまあそこそこほどほど

渋温泉・金具屋の龍神に歓迎される

金具屋
千と千尋の神隠し湯屋のモデル、というわけではないらしいのだけれど。

木造4階建ての見た目と、ひとつも同じ造りの客室はない、といわれるてんでバラバラのテーマパーク仕様は、「八百万の神様達が日頃の疲れを癒しに全国各地から訪れる」油屋ぽさがある。
渋温泉街・夜 渋温泉街・昼
これぞ温泉街、というイメージを現実化したような、入り組んだ路地。
あちこちにある住民用の外湯。
宿泊すると外湯(9つ)に無料で入れるので湯めぐりもできるけれど、金具屋が4つも源泉を持っているので今回は外湯巡りなし。歩いてみるとわかるけれど、宿泊者が入れない住民専用の外湯がちゃんと存在する。
ところでこんなご時世にも関わらず観光客がそれなりにいて、そして30代と思われるカップル、外国人連れのカップルが多くて驚いた。これまでも温泉街歩きはよくしてきたけれど、いつも温泉街を歩く客はまばらで、自分たちが一番若いと思わされてきたのが、ここにきてターニングポイントを感じる。
金具屋は感染症対策で、定員136名に対し60名程度までに制限。
せっかくだからと「金具屋を代表する木造客室9室」を予約。
私たちにしてみれば、破格の1室55000 円(税込)です。
私たちがリピートしてる定宿からすると6泊できる金額・・・。
宿泊棟は、「斎月楼・居人荘・神明の館・潜龍荘」と4つあり、木造4階建て・登録有形文化財を謳ってるのは「斎月楼」なので、当然そこに泊まるつもりで行ったのだけれど、部屋は指定できないので実際には「潜龍荘」でした。
増築を繰り返しただけあって、どこに連れていかれるかと怪しむレベルに遠い「潜龍荘」。
めちゃ「離れ」っぽいお部屋は、潜龍荘2階・501黒書院でした。
501黒書院 広縁
蔵のような入口で、実際錠前を開けて入室。
広縁から見える庭に小さな社があって、あれ龍神様だなって思った。
そして、この庭が見える「潜龍荘」こそが、増改築する前の、最初の金具屋だと、後でわかる。
主室
「潜龍荘」は明治後期に完成。1階の白書院と2階の黒書院が、のちに作る「斎月楼」の原点になったというだけあって、いたるところが凝っている。
本間8畳とやや小ぶりだけれど、2人にはちょうどいい。
主室の天井 広縁の天井
ふと見上げた天井が、漆塗り格子で菊の御紋。皇室のどなたかが泊まられた証・VIP部屋。
さらに、広縁の天井は、畳一畳幅の一枚板。
これがいかにすごいことかというのは、九代目館主が案内してくれる「金具屋文化財巡り」に参加するとわかる。登録有形文化財昭和11年建築の大広間の天井は、昭和20年の大雪で崩れ、昭和25年の再建。しかし格天井の中に入れる一枚板が手に入らず(幅のある板にするための大きな木がない)、板を3枚にして板の境目を隠すために格子の中に小さな格子を入れたという。改修せずに済んだ舞台部分の天井だけが、一枚板で残ったのだそうだ。
次の間と二の間 渡り廊下
踏込・次の間・二の間・本間・広縁とあるので広い。さらに渡り廊下の先にトイレがあり、その奥に浴室がある。
浴室 閂
石造りの風呂は小ぶりだけれど源泉です。お湯は入っていないので自分で入れる。
蛇口からは熱湯かと思うお湯(源泉)がでてくるので結局水で温度を下げないといけない。
知ってたら最初に源泉入れて冷ましてから入ったのになあ。反省。
ちなみに部屋の入口は、かんぬき。庭にも行ってみます。
玄関 潜龍荘
庭に出るための玄関あり。そして庭から撮った潜龍荘です。
斎月楼の方は通りに面していて、お立ち台ができるほどのフォトスポットになっていて、夜はライトアップされてるし、うっかり窓も開けられないって感じですが、潜龍荘の方は板塀あり庭ありでさっぱりどこかわからず、渋温泉のど真ん中っていう位置にありながら、隔世感ある静けさ。
この静けさに、お金を払って泊まりにきた甲斐あったなあって思う。
白龍大神と六代目西山平四郎
元々鍛冶屋だったのに、敷地から温泉が湧いたというので、宿屋に商売替えしたそうだ。
そしてその時に建てた旅館が「潜龍館 金具屋平四郎」。
ボーリングでなく、自噴泉。今も浪漫風呂に使われている。
祀られてるのは白龍大神とのこと。
そういえばロビーに水が入ったコップが2つ置いてあった。
祠のある方角の棚に置いているところをみると、あれは毎日龍神様と六代目にお供えしてるんだなあと気づく。
銅像になっている六代目西山平四郎が、「湯治」ではなく「観光」を、と昭和8年昭和11年に斎月楼を建てたそうだが、昭和30年発足の山ノ内町の初代町長でもあったくらいだから、斎月楼が(あるいは斎月楼をつくろうという六代目の気概が)、地域おこしとして相当に貢献したと思われる。
金具屋は3つの大浴場・5つの貸切湯があり、100%源泉かけ流し。
8箇所も入れないので、せめて源泉4種を楽しもうと、4箇所に絞ります。
自噴泉の大浴場・浪漫風呂(pH6.43・金具屋別荘)、黒書院の内風呂(pH7.9・金具屋第3ボーリング)、貸切・美妙の湯(pH8.22・金具屋第1第2ボーリング)。
それから、大浴場・鎌倉風呂(pH5.3・荒井河原比良の湯と温泉寺寺湯の混合泉)。
一晩中入浴可能なので、時間帯をはずしたおかげか、大浴場の浪漫風呂と鎌倉風呂も独占で堪能。

ホタルシーズンだったのでホタルも見られて感動した。
活気のある温泉街を歩きながら、一方で廃業したホテルもいくつもあった。
かつては温泉街のすぐ真上にスキー場があったというので行ってみたけど、跡形もなかった。
かろうじて、ここがスキー場だったと思われる地形を眺める。
時代の盛衰を尻目に、このタイミングで渋温泉に来られたことに感謝する。
旅行中は、終日雨でした。それもまたいいと思うことにする。とほかみえみため。