群馬の内湯巡り、今回は藪塚温泉です。昔は温泉だったらしいけれど、冷泉になってしまった温泉。湯を沸かして入ると万病に効くと薬師如来に指南されたメタケイ酸及び炭酸水素ナトリウムの冷鉱泉です。
つまり代謝を促進する意味合いが強い。
無色無臭のpH7.3とのことで入りやすい。ツルスベというよりも、ややきしみ感もあるところが、逆にいつまでも湯に浸っていたい感じで、肌馴染みよく、満足。
台風19号襲来で露天禁止ということだったので、台風が去った翌朝に露天独占。
日帰り入浴や宴会も受け入れてるホテルなので、普段は混むのだろうなあと予想しつつ。
眺望よし、台風一過の秋晴れ。
翌日は緊急対応の仕事になったので、観光は別日でリベンジ。
温泉神社の源泉
テーマパーク「三日月村」に行くからにはと「木枯し紋次郎」を予習していきました。
故郷は捨てたと言いつつ、いつまでもトラウマになっている紋次郎がついに故郷に帰る羽目になる「上州新田郡三日月村」の回は、文庫6巻のタイトルであり、テレビ版の最終回にもなってます。
紋次郎シリーズ(光文社文庫は全15巻)の中盤ということもあって、パターン化された展開にひねりを入れつつ読ませる文体は、読んでてものすごく波に乗ってる感あります。
笹沢左保の魅力は、人物描写以上に、その土地描写にあると感じていますが、群馬に4年住んだ身としては、冒頭の風と砂の描写からして沁み入ります。
三日月村は温泉があるのに水がない不毛の地として描写され、そこに水を引く用水路を建設するための大金を守って欲しいというのが、この回の話。
貧乏がつらい、食べ物がない、そもそも、作物をつくるための水がない!切実な大金です。
台風19号であたりが増水するさなか、藪塚温泉には氾濫するような川がないのかと安心する一方で、あたり一帯氾濫源、川まみれともいえる関東平野でそんなとこがあるのかと地図をみたらたしかにポコリと川がない。
扇状地で、水を吸い込む側の土地です。
最寄りの蛇川の上流端は、話の元ネタとなっていると思われる用水路で、現代では渡良瀬川から水を引き込んでいるもよう。
青い丸が薮塚温泉
蛇川というからには、きっと相当に蛇行した川だったろうから、下流の太田市内は扇状地の水が出る側と思われる。
洪水のない安全な土地と洪水が来るけど肥沃な大地の隣のあわせ。実際、古墳が相当数あり、土器が国宝にもなっていて歴史民族資料館にある縄文後期の耳飾りは想像以上の細かい造形。この土地は縄文時代が最盛期だったんだなと思わせる。
周囲より小高いだけあって、なんと石切場があり(三日月村から歩いていける)、そのための男たちがいて、貧乏な中にもつまり商売が成り立っている。
紋次郎の話の中では、大金を隠すための場所として出てくる石切場。
大谷石と同じ軽石凝灰岩。質は大谷より劣っていたようだが、昭和30年頃まで採掘していたらしい。
鉱山の男たち、温泉、宿となれば、まあ当然ながら、女がついてくる。
三日月村は当初はおとなのテーマパークだったんだろうと、あるいはそういう秘宝館的要素がはずせない時代か、と思わせる昭和40年代の匂い。
紋次郎の過去も間引かれそうになった6番目のこども(6人かあ)。間引かれなかったゆえに、さらに貧乏。望まれてないこどもはそりゃ10歳で故郷捨てるわ。
江戸時代があと30年で終わろうかという時代、天保の大飢饉、そういう時代背景を想像せずにいられない。
紋次郎がバッサバッサと切り捨てる縁も恩も義理も命も、小気味よく感じるからこそ、物哀しくてやるせない。
三日月村は最初から江戸時代のレトロ感を出したテーマパークだったろうけれど、茶屋の割れた壁や草が生えた屋根、壊れた炭焼き窯、足元の崩れた舗装、蝋人形の煤けた感じ、そういった一層に古びた感じ、が、愛すべきB級感とともに紋次郎の時代の厳しさを漂わせる。
山の斜面を利用した峠道も紋次郎の話を思わせて良かった。
まあ紋次郎の生家はもっと掘立小屋だったろうけど。
アトラクションはしなかったけど人気のようで、来場者が若い!コスプレ客までいる。すごいな、Youtubeの威力は。
40過ぎの私ですら紋次郎は初読なので、紋次郎が何たるかも知らない若者が来場するテーマパークになってることを驚いたり喜んだり、です。
隣のスネークセンターは過去に2回行ってるので今回はスルーしたけど、日本蛇族学術研究所の設立は昭和43年なので、おそらく同時期の開園だろうから、こちらもそろそろ建替時期なことを考えると、古さを堪能するなら今のうちにといったところ。